四季の展示

四季の展示「半衿」

2018-12-30

今日の半衿の形式は、結髪の普及と密接な関係があり、もっぱら本衿の汚れを保護する実用目的によるものであったことが※「守貞漫稿」に記述されています。

明治、大正期には女性のきものの色や柄が地味であったため、半衿に模様をつけることは、服装美の重要なポイントでした。当時は年齢や自分の好みを反映させるものは半衿とばかりに総絞りや金銀の刺繍入り、友禅染、ビロード、羅紗など贅を尽したものがありました。耳つき衿地が明治二十九年にはじめて織られ、店には専属の図案家も置かれたそうです。

大正期には、“流行は半衿から”と半衿のおしゃれは全盛期を迎え、材質ばかりでなく、色彩豊かに意表をつく、モダンなデザインが好まれ、大正三年に、三越でエジプト文化の展覧会が催され、洋楽器や彫刻などエジプト模様の半衿が流行しました。また、新年の歌会始めの御題が発表されると、「新年御題模様売出し」と店頭に張り出し、他の店に遅れをとらないようにと競い、商戦は、今も昔も変りがないようです。

今回は調査研究室の資料の中から羽子板や矢羽根など新春にふさわしい刺繍の施された半衿を中心に展示いたしました。縫いの手技と共にお楽しみ下さい。
※「守貞漫稿」は喜多川季荘による江戸期の風俗を書き記した書。

花簪(髪挿)

花簪(髪挿) 二越縮緬

梅、笹、菊、そして梅と段々に配した花簪(かんざし)。紅の八重の小菊が色あざやかで脇に勝負の軍配、矢羽根に願いをこめ、初春にふさわしいおめでたい重厚な縫いの半衿です。

松重ね

松重ね 二越縮緬

松は古代中国では、風雪に耐え厳寒や酷暑にも常緑を保つことから節操が高いことを意味しました。神通力のある仙人は松の木を住家として松の実を食すという仙人思想と結びつき長寿延命の印とされました。

南天の花

南天の花 揚柳縮緬

冬には赤い実をつける南天。初夏に白い花が咲いた後、その実が晩秋から初冬にかけて真っ赤に色づく姿にちなんで花言葉は「私の愛は増すばかり」白くふっくらと立体的に刺繍されたいっぱいの小花は純粋無垢なあふれんばかりの恋心が感じられます。

源氏香

源氏香 二越縮緬

平安時代から伝承された薫物合わせがより発展し、江戸時代初期に完成した源氏香。五十二通りの組み合わせに各々に源氏物語の巻名がつき、その香図は文様として、きもの、工芸品に使われています。

矢羽根

矢羽根 楊柳縮緬

桃色地に紅色と白のすっきりとした色づかいの矢羽根。真っ直ぐな矢は、魔をはらう意味がありお正月にふさわしい。縫いの手技も素敵です。

貝合わせ

貝合わせ 塩瀬

貝合わせと貝桶(紐飾り)をモチーフにした文様は江戸時代に着物や帯の意匠として用いられました。宮廷文化の薫りが感じられ、民衆の間で貴族たちの雅な生活への憧れとも重なり大変な人気となりました。

梅香る

梅香る 楊柳縮緬

江戸紫の楊柳縮緬に遠山の薄雪を銀糸の芥子縫いで表わし、山里に咲きほこる白梅からは匂いさえ感じられ、添えられた歌がいっそう景色を引きたてた半衿。

冬の吉祥花

冬の吉祥花 二越縮緬

縁起の良い南天、大胆に意匠化された梅、すっきりと伸びる可憐な水仙、名前がめでたい万両が砥粉色地に刺繍で表現されています。短冊が配され、立体感を出しています。

竹梅

竹梅 二越縮緬

竹と梅は、古来日本人に最も親しまれてきた文様として取り入れられてきました。竹はしなやかで強く、折れることがなく、梅は愛らしい花の姿と寒中に漂う芳香から新春一番に着る柄として親しまれています。

花菱

花菱 二越縮緬

青紫地に白の花菱が配された文様です。
花菱は現実には存在しない花を菱形にしたものの略称で、四つ組合せたものを四つ花菱、幸菱といいます。菱はその名のもととなった水草菱が繁茂しやすいところから子孫繁栄や商売繁盛の意味が込められ縁起がよいとされ、家紋にも使われています。

椿

椿 一越縮緬

椿は春を待つ花として冬の季節感を表わしています。古代から悪霊を払う力があると考えられ、神事には欠かせない木でした。文様としては華やかであると共に吉祥の意味も込められています。

山里の春

山里の春 二越縮緬

茅葺き屋根の見える山里に、重厚な笠松、優雅な藤、可憐な桜をちりばめ、その間に春霞を配したことで遠近感が引き出されています。

初春の八重梅

初春の八重梅 二越縮緬

ギザギザの鋸歯形に仕切った中を、笹、麻の葉、八重咲きの梅で埋め尽くした、めでたさいっぱいの華やかな刺繍半衿です。

羽根つき

羽根つき 二越縮緬

日本の四季「冬」。お正月の遊びとして親しまれてきた羽根つき。晴れわたった空に響く音。元旦、あの頃にもどり羽根つきを。敗けたら墨だよ、せいのー。

花もち(餅花)

花もち(餅花) 二越縮緬

日本人の暮しの中でうまれた花もち(餅花)。花もちと遠山のまわりの雪輪の白が際だち、ところどころに刺繍を配した半衿。無病息災で今年も良い年になりますように。

枝垂れ梅

枝垂れ梅 二越縮緬

雪輪を相良縫いの刺繍で縁どり、可愛い枝垂れ梅にすくすく伸びる竹を配し、春の訪れを待つかの様な、東雲色の縮緬地にやさしさが感じられる半衿です。

冊子と梅 二越縮緬

冊子と梅 二越縮緬

黒地に冊子と、学問の神様「菅原道真」の象徴とされる梅の花を組み合わせた文様からは、とても知的な印象を受けます。

花束(枝梅 青楓)

花束(枝梅 青楓) 羽裏

鮮やかな紅地に枝梅、青楓が愛らしい。梅は寒中に先がけて咲き芳香を放つとされ、青楓との組合せが印象的です。