寿 ことほぎ
服飾文化研究会は本年は創立五十周を迎えました。
調査研究室も平成七年に第一回の展示公開を実施し、今年で三十年となりました。
この度の展示テーマを寿(ことほぎ)として、四月より人生を四つに分けて文様展示をしてまいりました。
この世に生を受け誕生し、愛を受け育まれて成長します。学齢になり学び、無事に卒業、その後は世の中に出て社会の一員として働きます。やがて人生の伴侶と出会いゴールイン。親族も増し縁がさらに深まります。子供も巣立ちその後は悠々自適に人生を極めていきたいものです。
文様展示 寿(ことほぎ)は今回の悠で完了です。
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調査研究室展示公開のご案内
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壽 ことほぎ
人生百年 きものからのメッセージ
会期 令和七年十二月十日㈬~十四日㈰ 五日間
会場 みなとみらいギャラリー A・B・C会場
ご来場をお待ちして居ります。
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花七宝 錦紗縮緬 長襦袢
花七宝は、七宝文様の中央に花を配し、富や幸運をもたらすとされています。この七宝はそのものが円満繁栄そして人との和を意味していて、花を加えることで、その意味合いをさらに深め、今迄もそしてこれからも、子々孫々途切れることなく、繋がっていくことを願う吉祥文様です。
蝙蝠(こうもり) 二越縮緬 長襦袢
こうもりは漢字で蝙蝠と書くので中国では蝠と福の発音が同じであることから幸福を呼ぶものとされ、長寿の象徴ともいわれます。
日本でも江戸後期七代目市川團十郎が家紋にしたり、染め柄にし、大流行となりました。
海老 平絹 羽裏
えびの漢字は海老の老という字が腰の曲がった姿を連想させ、不老長寿の象徴として海の翁と呼ばれています。
また、脱皮を繰り返して成長を意味しているので、出世や昇進を願っているとされ、吉祥文様としても古くから愛されてきました。
将棋の駒 縮緬 羽裏
藤井聡太クンがプロになり子供や若い将棋ファンが増えました。とはいえ一局指すのにじっくり何時間もかかる棋戦も多く、忙しい現役世代は応援するのもちょっと大変。
でも悠々自適の今、あの飛車をとったら…いや角が効いているな、と名人になった気分。楽しんではいかがでしょうか。
丸文に昔話 錦紗縮緬 長襦袢
丸の中に模様を描いた文を鎌倉文といいます。
室町末期から江戸初期にかけて成立した代表的な日本五大昔話が、桃太郎、猿蟹合戦、舌切り雀、かちかち山、花咲爺です。
かわいいお孫さんに読み聞かせるのは、いかがでしょうか?
世界旅行 綿 羽裏
テレビ番組「兼高かおる世界の旅」の最初のテーマ音楽として使われていたのが一九五六年の映画「八十日間世界一周」の音楽でした。
海外旅行がまだ夢だった時代に想像の翼を羽ばたかせていたのです。
萬歳(まんざい) 平絹 羽裏
古来中国の宮城の丸瓦に未来永劫繁栄が続く願いの文字『千秋萬歳』が篆書(てんしょ)で彫られています。
日本では雅楽の『寿(ことほぎ)』に『萬歳楽(まんざいらく)』の舞があり、現代でも即位大礼などで舞われています。
おめでたい席では万歳、我が人生にも万歳。きものを愛するみなさんにバンザイ!
芝居小屋 羽二重 羽裏
江戸時代庶民の人気の娯楽に歌舞伎がありました。小屋は今日も大入り。演し物(だしもの)は歌舞伎十八番の「暫(しばらく)」です。
罪のない男女が悪人によって捕らえられ危機一髪、そこへし~ば~ら~くの掛け声と共にヒーローが現れます。
地域の清掃や祭のお囃子を若い世代に指導される人生の先輩も現代のヒーローともいえますね。
更紗文様 平絹 羽裏
更紗はインドを起源とし、木綿地に多色で文様を染めたもの。四千年以上の歴史を持つとされています。日本では絹にも染められ「和更紗」とよばれます。
長い歴史に思いを馳せ、ご家族と動物園でゆったりと過ごしてみては如何でしょうか。
七宝(繋ぎ) 塩瀬 帯
一幅に大きく描かれた七宝は、仏教の七種の宝に由来し、円が無限に繋がっていくことから円満、調和、子孫繁栄などの意味が込められています。
また人とのご縁や社会との良好な関係を築く願いを表現しています。
七宝の中に桜花、紗綾形、麻の葉の吉祥文様がふんだんに使われています。
雪輪に南天 縮緬 長着
「難を転ずる」とも読み替えられ、縁起がよいとされる南天ですが、姿でも、雪の降る冬の季節に葉を茂らせ赤い実をつけ、強い生命力を感じさせるものです。
福を呼び込み、家庭円満に悠々と日々を過ごせるようにと良い事尽くめの模様です。
歌舞伎 隈取り 綿 長襦袢
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)。菅原道真に仕える三つ子の兄弟、梅王丸、松王丸、桜丸が運命に翻弄される様子が描かれた長い物語です。
ゆっくりと歌舞伎見物を楽しむ気分を味あわせてくれる演目にちなんだ意匠です。
高砂(たかさご) 縮緬 長襦袢
能の演目である高砂に出てくる老夫婦を表す能面とほうきの組み合わせ。
相生(あいおい)の松と言われる樹齢千年の夫婦の松は神が宿る木とされ常緑なところから「千歳 ちとせ」とも詠まれる事が多く長寿を表し縁起のいい文様です。
将棋 平絹 羽裏
将棋の歴史は古く、平安時代にインド、中国を経て伝来、日本独自の発展をして現在に至る。
人生無難に生きて後半、悠々自適に暮らせることは大変幸せなこと、趣味としての将棋は男性中心でしたが近年女性も増えてきたようです。
音楽 綿 長襦袢
音楽は最も古くから、最も広く行きわたった芸術であるといわれます。
器物文の楽器、楽譜から音楽を聴くこと、自ら音を奏でること、リズムとメロディーで曲を作ることなどを想像し、人生と重ねながら心が豊かに満たされていくことを感じます。
麻雀 平絹 羽裏
麻雀に勝つ秘訣は人の言動や状況の変化に動揺しない落ち着いた心を保つこと。
悠然とした精神が求められるこのゲームは中国から入った当初は文化人に広まり、次第に日本独自のルールが生れ大衆化し大正時代と戦後に大流行しました。