四季の展示「夏の思い出」

日本は春夏秋冬の変化に富み、季節の移ろいに添って自然と向き合ってきました。
そのような豊かな風土の中で人々は美意識を育んできたともいえるでしょう。
きものに描かれたさまざまな文様、模様も豊かな感性で表現されています。
この度の展示は遠い夏の日の懐かしい思い出を文様裂の中から思い起こし解説を書いています。
朝顔、蜻蛉や蝉、海や山への小旅行、縁日、秋まつりなどなど。
皆さまも文様裂の中から思い出を辿られご覧下さい。
併せて美しい夏生地の素材の絽、夏錦紗縮緬なども鑑賞なさって下さいますように。

柳に鞠 二越縮緬 長着

柳に鞠 二越縮緬 長着

菖蒲色の地色に柳のシルエット。浮かびあがる蛍を思わせる光。じっとりとした暑さの中、一風の涼しさを感じた夏の一夜を思わせます。初夏に楽しんだ着物なのでしょう。

団扇に花づめ 紋綸子 長襦袢

団扇に花づめ 紋綸子 長襦袢

流水のような紐が涼しげな団扇の中に秋の七草の桔梗や萩を配し、季節をひと足早く感じさせてくれます。浴衣の後ろ帯に団扇をさして行った盆踊りを思い出します。

芭蕉に鳥 錦紗縮緬 羽織

芭蕉に鳥 錦紗縮緬 羽織

暑い一日が終る頃、突然西の空が暗くなりせわしげに飛ぶ鳥達、芭蕉の葉も大きくゆれ始めた。乾いた地面にもポツポツ。これで少し涼しくなるかな。

金魚 平絹 羽裏

金魚 平絹 羽裏

金魚は鎌倉時代に中国から伝わり江戸時代に養殖が始まりました。夏のきものにも描かれ、涼しさを感じさせてくれます。金魚とめだかがいっしょに泳いでいる様は縁日で楽しかった金魚すくいが思い出されます。

更紗文様 平絹 羽裏

更紗文様 平絹 羽裏

本来は近世紀初頭の南蛮貿易によってもたらされた染木綿。現在は一般に異国風な染め文様布を更紗と呼んでいます。一面に広がった異国の文物、生き物を目にすれば、いやがおうでも夏の旅行の数々の想い出の地が浮かんできます。

朝顔 夏錦紗 長着

朝顔 夏錦紗 長着

いつの頃か夏の風物詩、朝顔市に行ったのが思い出されます。中国原産ですが、すっかり日本の花となっています。夏錦紗の地に大輪の白い朝顔。それはゝ清々しく、よりいっそうの涼を呼びます。

蜻蛉 モスリン 長襦袢

蜻蛉 モスリン 長襦袢

遠~い夏の日、竿の先にとりもちをつけ追いました。蜻蛉は前にしか進まず退かないことから「勝ち虫」とも呼ばれ、その紋様は武士に好まれ、武具などの装飾に用いられました。

円文に昔話 錦紗縮緬 長襦袢

円文に昔話 錦紗縮緬 長襦袢

子供の頃に絵本を読んで貰ったり、子供に読んであげたり。舌切雀、桃太郎、猿かに合戦・・・。
うさぎの登場する昔話は、カチカチ山、因幡の白うさぎ、うさぎと亀等。貴女の思い出のお話は?

祇園祭 二越縮緬 長襦袢

祇園祭 二越縮緬 長襦袢

もうすぐ祇園祭。そろそろ囃子の稽古が始まる。あの笛やコンチキチン、コンチキチンと鳴る鉦の音はええもんどす。いくつになっても心が浮き浮きしてきますわ。

夏の水辺 二越縮緬 長襦袢

夏の水辺 二越縮緬 長襦袢

葉を茂らせた柳の下で連なって泳ぐ水鳥。涼しさを表す渦文に泳ぐのは可愛いカルガモの親子を連想させます。柳が揺れる水辺の散歩、ひと時の風が夏の暑さを忘れさせます。

鵜飼 二越縮緬 長襦袢

鵜飼 二越縮緬 長襦袢

古くは平安時代からで、小舟に篝火をたき、風折烏帽子、漁服、腰蓑装束の鵜匠が鵜を操り、鮎を捕る。現代でも見る人を幽玄の世界に引きこむ夏の風物詩ですね。

流水に虫籠 絽 長着

流水に虫籠 絽 長着

虫籠の文様は、その多様な形の面白さを見所にしたものが多く、王朝風な虫籠を配することにより文様としての格が上がります。子供の頃、父が頂いてきた鈴虫を夜、家族で夏の終わりを感じつつ、その美しい音色を愛でた事も、楽しい思い出です。

ウミネコ 夏錦紗縮緬 長着

ウミネコ 夏錦紗縮緬 長着

ウミネコの鳴き声を生で聞いた時は「本当に猫みたい!」とびっくり。紺碧の空と真っ青な海を自由に飛び回る夏らしいこの長着を着たら、空の上から景色が見えるかもしれません。

朝顔に萩 絽 長着

朝顔に萩 絽 長着

古くから日本人の心をつかんで離さない朝顔は、盛夏の植物文として一番に上げられます。
夏の早朝、見事に咲いた花を見つけて、清々しく、またその一瞬の美しさに、心を動かされます。秋の七草の萩を描き、涼しさを添えています。

夏の終り モスリン 長襦袢

夏の終り モスリン 長襦袢

子供の頃の夏休みの最後の休日に父と船を見に港へ行きました。空を映した海は目が眩む程に青く突風が私の麦藁帽子を飛ばした瞬間、父の大きな手が掴んでカモメ!と高らかに笑いました。

秋草と虫かご 絽縮緬 長着

秋草と虫かご 絽縮緬 長着

雅な二種の虫かごが並び配され、形の面白さを感じます。秋草との取り合わせで、涼しい秋を待ち望む文様です。子供の頃熱中した虫取り。殺生に胸が痛む夏の思い出です。

風神雷神 二越縮緬 長襦袢

風神雷神 二越縮緬 長襦袢

風神雷神といえば俵屋宗達作と伝えられ、尾形光琳そして酒井抱一も同様に描いて有名ですね。能演目に菅原道真が太宰府に左遷され死後雷神(雷電、鳴神ともいう)に変身、後に天神になったとある、この風神雷神は表情がユーモラスでなごみます。

金魚すくい 錦紗縮緬 長襦袢

金魚すくい 錦紗縮緬 長襦袢

水面にゆれる藻と金魚、縁日の金魚すくいを思い出す。すくえた喜びと鉢に移す時の真剣な顔。金魚の模様は幸福や豊かさという意味があります。いつみてもほほえましい。

紙ふうせん モスリン 子供長着

紙ふうせん モスリン 子供長着

色とりどりに描かれている紙ふうせんは、明治二十四年頃登場し、ゴム風船に代わって流行し、大正・昭和の時代より、まん丸の可愛らしい形は今も愛されています。子供達がポンポンとついて遊んでいる様子が思いうかびます。

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