四季の展示「秋を楽しむ」
季節はめぐり秋の訪れとなりました。虫の声も聴かれ、稲も色づき頭をたれています。このような季節の情景はきものの文様にも写し取られています。
豊かな実りをもたらしてくれる収穫の秋、灯火親しむ読書の秋、スポーツや芸術も楽しく・・・。
それぞれの文様からも人の暮らしや文化をも感じ取ることができます。
この度は、豊穣・芸術・モード・旅など、様々な秋を選んでみました。文様の中のいろいろな秋を見つけてご覧ください。
【花檜扇】二越縮緬 長着
色糸で綴られた檜の薄板に見立てた菊や紅葉からは秋の深まりを、綴り糸の動きからは雅が感じとれます。
袙(あこめ)扇とも呼ばれ、宮中では今でも十二単の装身具として使われています。
【旅】モスリン 長襦袢
天高く・・・のこの季節に、山登り、ドライブ旅行などそれぞれ楽しみたいですね。身につけているだけで夢が広がり、心が浮き立つような模様です。
【読書の秋】錦紗縮緬 長襦袢
昔 男ありけり・・・に始まる伊勢物語は当時、歌人に読まれ、現代も好まれています。
秋の夜長にゆっくり本を読めるのは至福の時ですね。錦紗の濃い染の絵表紙が楽しいです。
【薔薇と冊子】モスリン 長着
大きく写実的に描かれた薔薇は、「文明の花なり」として人気を博しました。オーケストラの絵や楽譜、冊子も描かれています。
西洋文化をモチーフとしたモダンな文様です。
【芸術の秋】綿 長襦袢
知的好奇心が高まり、感性も豊かになる秋。演奏会に出かけたり、楽器を奏でたり。こんな長襦袢を身につけると素敵なメロディーが思わず口をついて出てきます。
【優勝カップ】羽二重 羽裏
戦前の男物の羽裏でまだ外来語がみられます。ぬけるような秋の空の下、優勝目指し、汗を流しスポーツを楽しむ余裕のあった頃でしょうか。黒紋付き羽織姿で日の丸の扇をかざし、応援する姿が浮かびます。
【秋模様】二越縮緬 長着
いちょうは中国原産で黄葉時の美しさと剪定に強い特徴から街路樹として利用される。また、漢字の「銀杏」は実の形が杏(あんず)に似て、殻は銀白であることに由来してます。
【スポーツの秋】平絹 長襦袢
十月の「体育の日」はスポーツに親しみ、健康な心身を培うという願いが込められています。季節の良い秋に、ゴルフやテニスなどに親しまれてはいかがでしょうか
【南蛮船】錦紗縮緬 長襦袢
斜めにとった大胆な構図。荒波の中の船。漕ぎ手は何処(いずこ)の国の人々なのでしょうか。
異国への旅情を誘(いざな)います。
【稲穂に雀】二越縮緬 長襦袢
刈り取ったばかりの稲束に、豊穣を祝うかの様に雀がやって来ます。
そんな日本の原風景が目に浮かぶ長襦袢地です。
【ジャポン アール ヌーボー】羽二重 羽裏
日本伝統の技法や文様・色彩美にとらわれることもなく、美を大切に心ゆくまで楽しみたい。
秋の静寂の中で今夜も美の探究を!
【今宵は読書でも】平絹 長襦袢
季節の移り変わり、秋虫のなく夜、読書の秋と言われる豊かな空間(時間)の中で、今宵は「源氏物語」でも読みましょうか。
【琵琶に鼓】二越縮緬 長襦袢
秋の夜長に静か流れる琵琶の音(ね)。静寂を破るかのようにポンと相槌(あいづち)を打つ鼓。
そんな和楽器を配した良質な縮緬の長襦袢地です。
【葡萄文】二越縮緬 長着
葡萄の文様は古くは正倉院御物や能装束にも見られます。葡萄唐草文はシルクロードを経て日本にも伝えられました。
たわわに実る房とどこまでも伸びる蔓は豊穣と繁栄の象徴ともいえます。
【ティアラと薔薇】羽二重 羽裏
白地に宝石が煌(きら)めくティアラと赤い薔薇を配した模様は和服地には珍しくきらびやかです。薔薇は大正時代から描かれるようになりました。
【銀杏(いちょう)文】二越縮緬 長着
銀杏の葉の形は独特で、その面白さから文様や家紋(紋章)にも様々に変化され使われています。
見事に色づいた葉からは、深まりゆく秋の風情が感じられます。
【冊子に菊】二越縮緬 長着
菊が冊子の周りに華やかに配され、冊子の中にも菊が描かれています。冊子は知恵がつくとして、菊は邪気を払うとして縁起物とされています。読書の秋の情景がうかびます。
【旅】綿 羽裏
一九五〇年代の映画「八十日間世界一周」は多くのスターが出演したことで知られ、音楽は日本でもTV番組にも使われ、この放送を見ながらまだ行ったことのない外国に思いを馳せたものです。