絞り染め
絞り染は、インドの絞り染めの技術が中国大陸との交流や仏教の伝来などにより、わが国に渡来したといわれています。
奈良の正倉院に﨟纈(ろうけち・蝋染)、きょう纈(きょうけち・板締め)、とともに纐纈(こうけち・絞り染)の名で呼ばれるものが数多く収蔵されています。(三纈さんけち)。
正倉院の絞り染を見ますと奈良時代には既に立派な絞りが作られていたことが解ります。
﨟纈(ろうけち)は蝋(ろう)で防染、纈は道具を使い、締めたりはさんだり、纐纈は布地の一部分を糸で括ったり縫いしめたり絞った部分が文様となります。
絞り染は織物における絣と共に古くから世界の各地で行われてきた最も素朴な染色による文様の表現方法です。
わが国の絞り染めが華やかに登場するのは、桃山時代(一五六八年、織田信長が安土城を築き、その後、豊臣秀吉が全国統一を経て江戸幕府を開く頃)から江戸時代にかけて辻が花と呼ばれる美しい絞り染が現われます。
明治、大正時代から昭和にかけては学校教育の中で和裁などと並び、絞り染が教えられてきました。
この度は調査研究室の絞りの資料の中から選び展示しました。皆さまのお手持ちの絞り染は、どの技法であるか確かめる一助となりますように。
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花・蜘蛛絞り 綿 長着
蛛絞りは江戸時代から伝承されてきた最も古い絞りの一つで、中心から傘の骨のようにひだを取り、根元から糸を巻き上げて絞ります。この花は輝く太陽の下で元気一杯に咲き誇るひまわりのようで、眺めているだけで、明るい気持ちにさせてくれます。花心は帽子絞りです。
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山道・平縫い締め絞り 平絹 羽裏
最も基本的な絞り方、形通りに一定の針目で縫っていきその糸を引き締める事で防染が出来ます。締め方が弱いと色が入り、強すぎても型通りに仕上がりません。縫い方締め方の調整がポイントです。
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蝶・花絞り 綿 長着
中心が中国雲南省発生の蝶の様に見える花絞り。花絞りは布を二つ折りにしてさらに三つ折りにした三角の先端を折り、糸で縫い止める技法です。周りの輪郭線をぐし縫いして糸を引き締め、中を巻き上げる傘巻絞りと組み合わせた模様は、レースの様で現代的です。
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万寿菊・杢目絞り 平絹 羽裏
布地に五~十ミリ間隔で平行にぐし縫いをして絞り、染め出された杢目状の縦筋で「線」ではなく「面」を表現する技法です。
可愛らしい丸い菊は「万寿菊」や尾形光琳の画風から「光琳菊」とも呼ばれています。
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杢目絞り 斜め取り 平絹 長襦袢
自由な曲線で表現する事が可能な絞りで染め上がりが木目のような筋模様になる杢目絞り。斜めに配置した杢目絞りに添わせた日の出絞りが加わり動きのある模様を描き出しています。
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霞か雲か・平縫い絞り 平絹 長襦袢
平縫い絞りの手法で、ぐし縫い(並縫い)し、縮めた布を染めた技法です。夕焼け空にたなびく雲をイメージします。
大河ドラマの家康時代は文様として絞り模様が主流でした。
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花・紙当て絞り 綿 長着
図柄の裏面にふのりで和紙を貼りつけ防染と合わせ縫いと同じに平縫いにする珍しい方法です。まるで花が咲いたような模様です。
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花菱・三浦絞り 綿 長着
三浦絞りは十七世紀に豊後(大分)の侍医 三浦玄忠の妻が伝えたとされます。浮世絵にもこの三浦絞りを纏(まと)った人が多く登場し当時人気が高かった事がわかります。
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蝶 ・三浦絞り 一目絞り 綿 長着
三浦絞りで面を埋め、蝶の文様を表しているのは一目(人目)絞りです。細やかな絞りと涼やかな意匠が、夏らしい風情を誘い赤色がアクセントとなり愛らしさも添えています。
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蜘蛛絞り 絹 長襦袢
鉤針に生地をひっかけて、指先で傘の骨のように皺をとり、その皺を寄せ根元から糸を巻き上げて絞り、染めます。蜘蛛の巣状の仕上がりが特徴の素敵な長襦袢地になりました。隠れたお洒落を楽しみませんか。
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花と蝶と千鳥と 綿 長着
巻き上げ絞り、山縫い絞り、一目鹿の子絞りと数種類の絞りの技法を用いて、自然界のものを具象的な模様として染め出しています。動きのある愛らしい絵柄です。
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リーフ・折り縫い絞り 綿 長着
抽象化された葉の形を描き出す線は、折り縫い絞りです。布地を二つに折り、山の折り目に近い部分を平縫いして引き締める方法です。直線、蛇行線、草木の葉、文字などの輪郭線を表現する時によく使われます。
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目結(めゆい)・蜘蛛絞り 人絹 羽裏
支子(くちなし)色地の布を※蜘蛛絞りで深緑に染め上げ、部分的に猩々緋(しょうじょうひ)色も重ねた鮮やかな羽裏です。鹿の子絞りを図案化した目結という文様です。
※皺を寄せ根元から上部に巻き締める方法で模様が蜘蛛の巣状になる絞り
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ひまわり・合せ縫い絞り 綿 長着
大輪のひまわりが伸びやかに配されています。花びら部分は輪郭線を山折りして向かい合う山を合わせて縫い絞る合わせ縫い絞り、花芯部分はバラ鹿の子絞りで染められています。
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鈴・三浦絞り 絹 羽織
この作品の手法は、三浦絞りの中の石垣三浦です。括り粒を大小さまざまに、すき間の出来ないよう斜めに石垣を積み上げたような形です。飾り紐つきの鈴模様の羽織です。
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渦(うず)巻き・山縫い絞り 綿 長着
山折にした布を糸で縫い、それを引き締めて染め出す絞り染めで、「つまみ縫い」や「折り縫い」とも呼ばれています。円や弧が沢山集まってできている「渦」はとても原始的な模様で、永遠や力強さを連想する模様として使われてきました。
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斜め取り・桶絞り 平絹 長襦袢
比較的大きい模様を染め分ける桶絞りは、桶の中に染めない部分の布地を入れ、染める部分だけを桶の縁から出して蓋を強く締め、その桶を染液に漬けて染めます。他の技法と併せて用いられる事も有ります。
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蝶・ 帽子絞り 綿 長着
蝶の触角は折り縫い絞り、羽根は帽子絞り(染めたくない部分をビニールで防染)、小さな蝶は花絞りと幾つもの技法を使った藍と白の対比がさわやかな絞りです。藍はジャパンブルーとも呼ばれ、古くから世界中で愛されています。
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蝶・山縫い絞り 平絹 羽裏
型通りに一定の針目で縫って、その糸を引き締める基本的な絞り方。締め方が弱いと色が入り強すぎても型通りに仕上がらず、糸の調節がポイント。蝶の触角は山縫い絞りです。
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麻の葉・板締め絞り 綿 長着
布を三角形に屏風だたみし、両面から板をあて防染すると幾何学模様が展開します。布のたたみ方や板の形、染料の浸し方を変えることで様々な柄を作る技法で、涼しげな麻の葉模様になりました。今夜はゆかたで花火大会へ・・・。