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銘 仙

銘仙は養蚕農家が出荷できない不良繭や玉糸からひいた熨斗(のし)糸を使って自家用に織りあげた太織(ふとり・ふとおり)が始まりといわれます。緻密な織物であることから目千・目専(めせん)と呼ばれ、明治以降に銘仙と呼ばれるようになりました。

化学染料の導入や染織技術の進歩により色鮮やかで大胆に、銘仙は多くの女性の心を捉えます。

明治三十三年パリで開かれた、万国博覧会のテーマのひとつにアールヌーヴォ(新しい芸術の意)といわれた美術運動があり、これらの影響も受けて銘仙はますます洗練されていきました。

<展示物の技法>

☆解織(ほぐしおり)

経糸は仮織して型紙捺染、緯糸は仮織を解しながら本織。多彩な色使いができる。

☆併用絣

経糸は解織の技法。緯糸も型紙で捺染。

大柄で多彩な模様柄が特徴。

☆緯絣

緯糸のみに絣糸を用いる。横方向に絣足が表われる。

☆半併用

経糸は解織の技法。緯糸は手括りによる絣織。

横方向に部分的に絣糸が表われる。

この度は今秋に開催の展示公開

  銘仙回顧 ~大正・昭和のレトロモダン~ に先がけて銘仙裂を展示いたしました。

矢羽根に花模様     解織  長着

群青色地に牡丹色の矢羽根、銀鼠色の大きな花、鮮やかな色どりは華やかに、装った時の思いが伝わります。

縞           解織  長着

縞銘仙と呼ばれ、多彩なバリエーションが生まれ、大流行しました。当時の小説の中にも出て来ます。緯糸に黒糸が使われ見る角度によって異なる色合に見えます。

赤い花         解織  羽織

赤い花がはっきりと際(きわ)立つ色合いです。何の花かは解りませんが、銘仙模様としてふさわしい華やかな色使いです。折りたたんだ跡がみえるので羽織の衿部分でしょうか。

麻の葉           併用絣  長着

生育が速く病害虫に強い麻の葉は子の成長や魔除けによく用いられますが、銘仙ではかなり大柄で大胆な配色がよく見られます。経(たて)糸と緯(よこ)糸を染色する併用絣である事が黒の細い絣足が見られる事から解ります。

果実          解織  羽織

みかん、それとも柚子でしょうか。可愛い黄色の果実。葉のグラデーションは絣の妙。解しの技が、秋の羽織になりました。

音符          緯絣  長着

曲線の音符模様を綺麗に織り出しつつ緯絣も大胆で銘仙の技法が良くわかります。日本の伝統的な楽器は漢数字と記号を使ったそれぞれ独自の楽譜があり、当時の音符は西洋文化を表した粋な模様と思われます。

格子に枝バラ(薔薇)  半併用絣  羽織

赤と黒の格子の上に白くゆるやかな曲線でバラが描かれています。さらに花はまるでスポットライトが当たっているかの様に浮かび上がって見えます。これは緯(よこ)糸に白く染め抜いた絣糸を用い文様を際立たせた半併用の特長です。

幾何学文様 三角形   経絣  長

幾何学文様の三角形を組み合わせて織り出された絣柄は、見る人によって様々なものを想い起こさせます。(鳥?魚?蝶?やじろべえ?・・・・)銘仙としては地味な印象ながら、小さき形の繰り返しに可愛らしさを感じます。

牡丹          解織  羽織

百花の王、牡丹は「幸福」「高貴」を意味します。小さなつぼみから大輪の美しい花を咲かせるのが由来で、染織模様に多く使われてきました。こんなに色鮮やかな模様銘仙の羽織を着たら、どこかにおでかけしたくなりませんか。

矢絣         経絣  長着

弓の矢羽根を模したところからこの名があります。

矢羽根は束ねた糸を染め分け、この糸を整経するとき隣の糸を少しずつずらし山型に整えてつくります。この模様が大変な人気をよび、明治以降女学生の袴下の着物に用いられました。

柊(ひいらぎ)と唐花   解織  長

日本の家庭でクリスマスを祝う様になったのは東京オリンピック(昭和三九年)の頃でしょうか。洋服が普及した時代に、作者が銘仙のきものにクリスマス柄を取り入れたのは、新しい時代への希望と期待を込めたからでしょう。

青海波に花の丸     解織  長

どこまでも続く波模様の青海波と、始まりも終わりもない花の丸を組み合わせた吉祥文様です。色合い豊かに織り上げられた銘仙です。穏やかな日々を願うのは昔も今も同じ。近年災害が多く、穏やかな日々を願わずにはいられません。

薔薇         緯絣   長着

緯絣は、緯糸のみに絣糸を用いるので横方向に絣足が表われます。文様の薔薇は西洋から入って来た花です。季節を問わないとされ、さまざまな種類の薔薇が文様化されています。

藤           緯絣  長

藤は古くから日本に自生する植物です。藤の花というと紫色を思い浮かべますが、実は淡い紫、淡い赤紫、白、黄色などもあります。この銘仙裂は藤の花の房を具象化して特徴的な模様で表わしています。また銘仙の色彩やかなコントラストを緯絣で織り出しています。

洋花          解織  羽

群青色の地に華やかな洋花。そして臙脂色の葉。経糸は多色、緯糸は黒のみを使った解織です。レトロモダンな装いを楽しむ羽織でした。

蔓(つる)薔薇       解織  長

解織技法ができたことで銘仙に曲線的なアール・ヌーヴォー風の表現が可能になり、この蔓薔薇ののびやかさを描き出しています。大正末期~昭和初期のモダン文化の香りがします。

椿           解織  羽織

解織は、経糸に型染めをするため、大胆な大柄を表現することができます。経糸の模様が緯糸の色と重なり合い、深みのある美しい椿が織られています。絵画や工芸の模様に、椿は日本を代表する文様として欠かせないものです。

破れ菊立涌       解織  羽織

立涌のふくらみの中に菊文様を配し、ところどころに切れたさまを“破れ”と表現。正倉院にもある有職文様といわれる文様ですが、かなり大胆な大きさですね。

雪輪唐草        解織  長着

白と臙脂(えんじ)の経糸で成した縞を背景に配された文様は、雪の結晶を文様化した雪輪とくるりと丸まった唐草です。型紙捺染された経糸と臙脂一色の緯糸で織られた解織です。

葉           解織  長

銘仙とは関東地方で織られた紬の一種で、それまでにない自由な柄のデザインが、女性の社会進出と重なって好まれました。黒地に目を引く色合いで、木の葉と遊ぶ気分になる文様です。

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