四季の展示「春から初夏へ 季節を彩る花」
日本には美しい四季があり、万葉以来の文学にも日本の四季感は多様に表現されています。
そしてその四季の移り変わりとともに咲く花の美しさは心を和ませ、時としては癒してもくれます。
華やかな大輪の花、つつましくひかえ目の花、花の色や形、芳香や佇まいもさまざまです。
今回は文様裂に描かれた美しい花々の競演をお楽しみ下さい。
檜扇蝶 羽二重 長襦袢
様々な種類の花が色とりどりに咲き乱れる中に檜扇を蝶の様にみたて、はばたいている様子が描かれた、心躍る模様。春の庭は百花繚乱。
籠目 杜若 二越縮緬 羽織
星形の連続で魔除けとされる籠目を大胆に手前に配し、奥には流水に運ばれる桜、伊勢物語の八橋の場面を連想させる杜若など春の水辺の風情が描かれています。
藤棚 二越縮緬 長着
白や紫の見事な花房を下げる姿は、藤原氏全盛の平安時代後期に象徴として尊ばれ、特に公家社会では多く用いられ、有職文様としても盛んに使われました。
斜めどりに枝桜 二越縮緬 長着
春色の濃淡の暈しを斜めどりに。その上に愛らしい形の花々が華やぎを添えている。
中央の枝桜に見入れば、微かな風が花を揺らし、辺りは一瞬にして・・・・春爛漫。
竹垣に薔薇 二越縮緬 羽織
白い竹垣に大輪の薔薇、可憐な紫の小花が描かれています。地色のインディゴ(濃い藍の色)が花々を立体的に浮き上がらせ、香りまで感じられるかの様です。
蛇籠 蒲公英(たんぽぽ) 錦紗縮緬 長着
蛇籠は中に石などを詰め、河川に沈め水の勢いをそぐための物で、流水と共に意匠化されています。蒲公英にコントラストをつけて描き分けていて、灰桜地に映えています。
朧月(おぼろづき) 錦紗縮緬 長着
「春日なる三笠山に月もいでぬかも、佐紀山に咲ける桜の花の見ゆべく」古代には梅の人気に遅れをとっている桜でしたが万葉集にも詠まれています。濃き紫地に春がすみ、雪輪を月にみたてた風情ある模様です。
野の薊(あざみ) 二越縮緬 長着
綿毛のついた可愛らしい花をつけ、葉はギザギザの棘を持つアザミ。春から夏にかけ野に自生し、その若い芽は食用にも・・・
銀鼠色の地に鮮やかな紅色と黄蘗色の花が際立つ着物地です。
牡丹 二越縮緬 長着
牡丹は中国の原産で、花の豪華なことから百花の王とされ、富貴の象徴となっています。大輪のあでやかな花姿は気品と風格を漂わせ満開の薔薇も描かれ、よりモダンなものになっています。
チューリップ 羽二重 羽裏
一幅の絵画を見る。薄い櫨色地。朱色で描かれたチューリップと自由曲線を組み合わせたアール・ヌーヴォー調の羽裏、単調な線は春のそよ風、動きを感じられます。抽象表現主義、“マーク・ロスコ”の絵のように。
杜若(かきつばた) 二越縮緬 長着
鮮やかな花浅葱色の水辺に五月雨が静かに落ちるなか、凛として立つ杜若。その美しさは万葉集に詠まれ、また尾形光琳の屏風絵にも・・・古くからその魅力は人々に愛され続けています。
百合 錦紗縮緬 長着
上品で優雅に咲く百合の姿は、夏の花の王者といえます。種類も多く清楚な花で、あたりを圧するほどに香ります。群らがって咲く絵柄は近代、特に好まれ、良く用いられるようになりました。
枝垂れ桜に蛇の目傘 二越縮緬 羽織
傘の模様は着物の文様としては通年のものでありますが、取り合わせるものによっては趣が異なります。この蛇の目傘に枝垂れ桜となれば、桜雨か桜影の風情でしょうか。
ダリアに鳳凰 二越縮緬 長着
ダリアやチューリップの花々が咲き乱れる中を五色に彩られた羽をなびかせ舞い飛ぶ鳳凰は、古代中国の想像上の瑞鳥です。
神秘的な楽園の様です。
ひなげし 二越縮緬 長着
別名、虞美人草。中国歴史上の絶世の美女虞妃が由来。薄い和紙で作った様なしわのある花弁が風に揺れる姿が愛らしい花。優しい色づかいからは、花言葉の「いたわり」「思いやり」が感じられます。
花籠 二越縮緬 長着
薔薇は、昔から日本に存在し、「うまら」「うばら」と呼ばれ、万葉集や古今集に詠まれています。
日本で文様となったのは近代になってからで、大正期に大流行しました。
花扇 モスリン 長着
桜、撫子に万寿菊と小さく可憐な花々で飾った雅な檜扇は少女らしく愛らしさにあふれています。レースの様に斜めに配された花の緋色がモスリンならではの鮮やかな発色です。
流水に菖蒲 二越縮緬 羽織
絵師、尾形光琳「かきつばた図屏風」を思う、春風が吹き、桜が散り、緑が萌え、蝶が舞う。
ただ、ただ、足をとめ見惚れる。初夏の菖蒲かな。